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由里「出来ました、召し上がってください」
今日の献立は焼き魚と吸い物と炊き込みご飯だ。
机に並べられた食事を見ると、義母の眉間にシワが寄る。
義母はこれ見よがしに大きくため息をつき、私をきつく睨みつけた。
千寿子「ちょっと、何か足りないんじゃない?」
由里「え?」
千寿子「お漬物は?」
由里「今切らしてるんです。帰りに買ってこようと思ったんですが、時間がなくて…」
千寿子「言い訳は結構!!!」
義母は大きな声を荒げると、机を掌で叩きつけた。
食器がガチャンっと音をたて、吸い物が溢れる。
智和「たく…注意力が足りないんだよ。仕事でもそうだよな。」
由里「すいません…」
二人がさらに私を責めようと口を開くと、雅明が義母の裾を引っ張った。
雅明「ご飯…食べないの?」
千寿子「まあ、まーくんごめんねえ…。おばあちゃんと一緒に食べようか!」
義母と夫は、ころっと表情を和らげた。
二人とも、雅明にはいい顔をするのだ。
雅明「ん。ままも一緒に食べよ?」
智和「お母さんは皿洗いがあるから、先に食べような」
雅明「まま…?」
由里「おばあちゃんと、お父さんと食べてて?ごめんね」
雅明「うん…」
悲しそうに眉を下げる雅明に胸がズキリと痛んだ。
由里「さて…そろそろ2階に行かないと…」
わたしは食事を手にいそいそと階段を登った。
義父、和彦さんは、脳卒中で倒れてから、下半身不随で寝たきり状態で、この部屋から出るのは病院に行くときだけだ。
由里「お義父さん。失礼します」
義父はテレビを見るわけでもなく、静かに天井を眺めていた。
由里「晩御飯を持ってきました」
義父「ああ」
由里「食欲はありますか」
義父「動いてないから、あるわけがないだろう」
義父は、物静かで、私に笑顔を見せた事がなかった。
おそらく、義母と同じように、私のことをよく思ってないのだろう。
由里「じゃあ、また食べ絵終わる頃にきますね」
食事を並べて、部屋を出ていことすると、義父が不意に私を呼び止めた。
義父「さっき、千寿子の大きな声が聞こえたが。何があったんだ」
由里「あ…少し、晩御飯を作るのに手こずりまして…」
義父「他には」
由里「あ、いえ…何もありません」
義父「…そうか。最近千寿子の料理を食べていないな」
義母「あ、すいません。お口に合いませんでしたか」
義父「誰もそんなこと言ってないだろう。もういいぞ」
義父はそれから話すことなく、食事を口に運び出した。
それからも、二人のいびりは続いていた。
私の休日の日は特ににひどかった。
庭で洗濯物を干していると、義母のヒステリックな声が響いた。
由里「どうかされましたか」
義母「ちょっと、この洋服の畳み方違うわよ!変なシワができるじゃない!」
すごい剣幕で箪笥の引き出しを指さす。
由里「え、けど、この前はこの畳み方にしろって…」
義母「知らないわよそんなの!」
義母は箪笥の服を引っ掴むと、部屋中に撒き散らし始めた。
由里「落ち着いてください!」
義母「うるさいっ、あんたが適当にやるから悪いのよ」
義母は全ての服を撒き散らすと、満足気に笑みを浮かべた。
義母「これ全部たたみ直し!畳みかた覚えるまで畳みなさい。あ、30分後には昼ごはんの支度もしなさいよ」
由里「分かりました…」
義母の要求はこれだけではない。
義母「買い物に行くから、お金頂戴」
由里「お金は自分でなんとか出来ませんか…」
義母は、自身の年金で生活をしていない。
生活費となるのは私と夫の稼ぎだけだ。
義母「は?夫の母を労う気持ちがないの?」
由里「いや、流石にお金は…」
義母「はあ、じゃあ離婚ね。智和に言いつけて、離婚してもらうから」
私が反論すると、必ず“離婚“というワードで脅す。
そしてその脅しに、私はなんの抵抗も出来ないから、義母はますます図に乗るのだ。
由里「っ…分かりました。これで足りますか」
2万円ほど渡すと、義母は嘲笑うように札をヒラヒラ仰いだ。
義母「これっぽっちい?ま、いいわ。私、優しいからこれで我慢してあげる」
そうして義母はブウランドもののバックを持って、家を出てくのだった。
そして、夫も帰ってきて、晩御飯の時間。
例に漏れず、一人皿洗いをしていると、雅明が元気な声で言った。
雅明「ママ、このハンバーグ美味しいよ」
由里「ありがとう」
雅明の言葉は素直に嬉しかったが、確かにその場の空気が凍ったのが分かった。
智和「雅明、けどおばあちゃんのハンバーグの方が美味しんだよ?」
雅明「そうなの?」
智和「ああ。お母さんは料理が下手だけど、おばあちゃんは上手なんだ」
千寿子「そんなに煽ても何にも出ないわよ。まーくん、今度作ってあげるからね」
雅明「ん…ありがと」
雅明は義母にふにゃんと笑みを見せると
雅明「そうだ!ママに見せたいものがあるんだ!」
っと、席を立った。
雅明「これ!」
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