①マザコン夫と意地悪な義母『お前は家政婦のようなもんだから』

マザコン夫と意地悪な義母

私の名前は斉藤由里。

仕事終わりの疲労した身体で帰路についていると、軽快な着信音が鳴った。

あぁ、今日は少し残業したからな…もうお呼びか…。

スマホの画面を見ると、相手は案の定、夫からで、ガクリと肩を落とした。

携帯メッセージ『早く帰ってきてよ。晩御飯の時間遅れるだろ』

労いの言葉もない文章にはもう慣れたものだ。

 

 

由里メッセージ『あと10分で着くから、もう少し待ってて』

簡単に返信をし、駆け足で、家に向かっていると、花火のポスターが目に止まった。

由里「そういえば…もうそんな時期か…」

私はそっとポスターに触れ、一人物思いに耽った。

 

 

それは真夏の花火大会での出来事。

大勢の人が賑わう屋台から少し離れた高台には、私達二人以外誰もいなかった。

いつもは一言口を開けば、ずっと話し続ける彼も、静かに花火を見上げていた。

花火の打ち上げ音に耳を傾けていると、彼が「あのさ…」と口を開いた。

打ち上げ音にかき消されそうなほどの小さな言葉を漏らした彼の表情は強張っていた。

 

 

智和「俺と…結婚して下さい」

彼は小さな箱を差し出し、ペコリと頭を下げた。

箱の中に収まる小さなリングが、花火の明かりできらりと光る。

彼の手がふるふる震えているのが、極度の緊張を表していて、なんだか可愛かった。

由里「私でよければ…喜んで」

花火の音にかき消されないように返事をすると、緊張から解き放たれた彼は、久しぶりに満面の笑みを見せた。

本当に幸せだった。

確かにこの幸せが、彼となら、ずっと続くと思っていた。

 

 

そもそも私と彼は、某保険会社の営業部で勤めてた。

彼は、喋り上手で面白くて、仕事も出来て、社内で人気者だった。

社員A「智和さんって、面白いし、かっっこいいし、高スペックだよねえ」

社員B「由里、智和さんに業務指導してもらってるんでしょ?いいなあ」

周りが彼を称賛するように、私も彼の事が気になっていた。

彼の指導はとても分かりやすかったし、親身に相談にも乗ってくれて、私の心はどんどん彼に惹かれていたのだ。

 

 

そんなある日

智和「実は、俺、由里さんの事が好きなんだ…良かったら、お付き合いしてくれませんか?」

憧れの彼からの告白を断る理由はどこにもなかった。

由里「嬉しいです…よろしくお願いします」

私は、人生の幸せを一つ掴み取った…と、一人舞い上がっていた。

不幸の道をすすんんでいるとも知らずに…。

 

 

由里「ただいま帰りました」

玄関を潜ると、さらに疲れが増した気がした。

正直この先を進みたくない。

 

雅明「まま!おかえり」

由里「雅明、ただいま、いい子にしてた?」

 

満面の笑みで私に駆け寄ってきて、私の足に抱きついたのは、今年で6歳になる息子の雅明だった。

私の足に頬を擦り寄せて、ふにゃんと笑みを浮かべる。

 

雅明「うん、してたよ!」

由里「そっか、偉いね。急いで晩御飯の支度するから、少し待っててね」

 

クシャリと雅明の頭を撫でた。

 

雅明とリビングに向かうと、夫と、義母である千寿子さんがソファに腰掛けていた。

我が家は、二年前に義父が脳卒中で倒れてから、二世帯住宅の五人暮らしなのだ。

しかし、この生活で、私の心身はかなり疲弊されていた。

千寿子「おかえりなさい。ずいぶん遅かったのね」

由里「少し残業で…すいません、すぐに支度しますね」

千寿子「和彦さんの薬の時間もあるんですから、早くしてくださいね」

由里「はい。分かりました」

 

そもそも、この家で私は一切の意見をしてはいけない。

 

智和「二世帯住宅をするにあたって、お前は家政婦のようんなもんだから、よろしくな」

 

二世帯住宅を始める前に夫が放った言葉に、私は目を丸くした。

 

由里「家政婦って…私達、夫婦でしょ?助け合えないの…」

千寿子「ちょっと由里さん、あなたは斉藤家に嫁いできたんですよ?両親を早くに亡くしたあなたを快く斉藤家に迎えてあげたんだから、それくらいして当たり前じゃないの?」

由里「けど、私も働いてる身ですし…」

千寿子「何?じゃあ、離婚しますか?」

由里「え!?」

智和「母さんが言うなら、俺は別にいいけど」

 

この時私はやっと気づいたのだ。

夫は、かなりのマザコンだと言うことに。

確かに頻繁に義母に電話はかけていたり、実家に帰ることも多かったが、それは

単なる家族想いからなるものだと思っていた。

しかし、それは大きな間違いだったのだ。

 

千寿子「当然離婚したら、まーくんの親権はこちらにもらいますからね」

智和「知り合いにその手の弁護士がいるから、簡単に親権は奪えるんだからな」

由里「そんな…」

 

私に反論する余地はなかった。

 

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