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第6部:義父からの手紙
私「それは、泣いてることに対して…です」
義父「私が謝れと言ったか?」
私「いえ…」
義父が上半身を起こしジッと私を見据える。
義父「千寿子には、今日は由里さんが仕事で疲労しているから、由里さんの代わりに祭りに行くと聞いたが…本当か?」
そんなことは一切ないが、これで告げ口みたいなことをしたら、後から何を言われるか分かったものじゃない。
私「はい…そうですね」
力なく頷いた私に、義父は小さく息を吐いた。
義父「じゃあ、泣いてたのは何故だ」
私「それは…なんでもないです。大丈夫です」
義父「じゃあ、質問を変えようか。お前は今、幸せか?」
私「え…」
突然の質問に思わず目を丸くして義父を見る。
義父「お前が此処に来てから、笑顔を見ていないな」
私「それは…」
義父「話したくないならいい。人には隠したいことの一つや二つある」
義父は一口お茶を飲み、自身の手前にある引き出しから一通の手紙を取り出した。
義父「これは、私が死んでから読みなさい」
私「これは…?」
義父「死んでから好きなだけ読めばいい。私はご飯をいただく」
義父は煮物を口に持っていくと、何も話さなくなった。
手の中の手紙に困惑するが、私は一つ頭を下げ、部屋から出た。
そして、手紙はそっと、自身の机の引き出しにしまった。
それから数週間後、義父は息を引き取った。
今朝、私が朝ごはんを持っていくと、苦しそうに呻いていて、すぐに救急車を呼んだが、間に合わなかった。
息子「お爺ちゃん…もう起きないの?」
私「そうね…もう、お星様になって、雅明のことを見守ってくれてるわ」
息子「う…お爺ちゃんっ」
息子はホロホロと涙を流し、義父の死を悲しんだ。
その後は、お通夜の手続きや、今後のことを葬儀屋さんと話を終えた。
あとがき
義父は間違いなく「私」の様子を見てくれていたと思う。
そしてたぶん、もっと嫁の笑顔を見たかったんじゃないかなぁ。
身の回りの世話をしてくれたことについても、感謝していたんだと思う。
義母と旦那ちゃんは義父のことをほったらかしにしてるってひどいよね。
そんな「私」が辛そうにしていることを察して、「手紙」を渡してくれたんだろうね。
手紙にはいったい何が….?
次回、第7部「離婚届」

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